業務別 AI自動化の進め方 — 経理・サポート・PM ほか6業務の実装パターン
「うちの業務、AIで自動化できるんだろうか」。AI自動化の相談で最初に聞かれるのは、たいていこの問いです。一般論を読んでも判断が付かないことが多いので、私たちが実装してきた6つの業務シナリオを、構成図・技術スタック・人の介入ポイント・工数の目安・落とし穴まで含めて並べます。
どの業務でも共通しているのは、AIに全部任せる設計にしないことです。下書きや候補出しまでをAIが担い、最終確定は人が行う。この線をどこに引くかが、業務に定着するかどうかを分けます。
6業務の早見表
各業務の特徴・人が残す役割・想定工数を並べます。自社の業務がどれに近いかを見つけて、該当章に進んでください。
経理:請求書・領収書の読み取りと転記
月末に紙とPDFが届く。会計システムへの手入力で残業が発生し、ミスも避けられない。経理担当が月40時間以上をこの作業に取られている、というのは典型的な相談です。
領収書画像
仕訳の下書きを作成
修正して確定
登録(API/CSV)
カスタマーサポート:問い合わせの一次対応とFAQ自動回答
同じ質問が繰り返し届く。FAQページは整備したが、お客様は読まずに問い合わせてくる。一次対応の時間が膨らみ、本当に対応が必要な相談に手が回らない、という状況です。
(メール / フォーム)
検索して回答案作成
送信
記録
プロジェクト管理:議事録から決定事項とタスク自動起票
会議は録音されている。議事録もAIが起こしてくれる。でも、決定事項とタスクは誰かが拾って起票しないと動かない。議事録は作られるのに誰も読まない、やると決まったはずなのに実行されない、という状態です。
(Zoom / Teams)
決定/宿題を抽出
担当者を割当て
Asana へ起票
バックオフィス:稟議・申請の不備チェックと仕分け
稟議書や申請書を受け取り、内容を確認し、必要な部署に回付する。判断基準は言語化できるのに、担当者の経験に依存していて属人化しがちな業務です。
(社内システム)
仕分け先を提案
または差戻し
に進行
営業:提案書の論点整理と顧客別カスタマイズ
既存の提案書テンプレートを顧客に合わせて書き直す作業に時間が取られる。営業担当が個人で工夫しているため、品質にばらつきがあり、ナレッジも蓄積されない。
過去の提案資料
提案書ドラフト生成
修正・確定
提案書
エンジニアリング:コードレビューと運用手順書の整備
私たち自身が日常的に使っている領域です。コーディングエージェントが Pull Request を作る、レビューの観点を整理する、運用手順書を最新状態に保つ。実装速度よりも、レビューと文書化の手間が減ることのほうが大きい効果です。
変更内容
手順書差分提案
判断・マージ
手順書更新
業務を選ぶ時の判断軸
6業務を並べましたが、どこから手をつけるかは組織の状況で変わります。私たちが顧客と最初に整理する判断軸を3つ示します。
(1) 「人の確認」が許容される業務か。AIに全部任せられる業務は実はかなり限定的です。経理・営業の最終確定など、人の判断を残す設計にして自然な業務は、定着しやすい順番が上です。
(2) 入力データの整備状況。RAG系(カスタマーサポート・バックオフィス)は元ドキュメントの状態が成果を決めます。整備が進んでいない場合、AI導入の半分の工数はドキュメント整備になります。これを見積もりに織り込んでいない案件は、本番直前で詰まります。
(3) 工数削減の見える化が可能か。AI自動化の効果は「○○の作業時間が×時間減った」で測ります。逆に言えば、現状の作業時間を測れていない業務は、効果が測れず継続予算が付きません。先に作業時間を計測する仕組みを入れるのが、結果として近道です。
これら3軸でスコアリングして優先順位を決めると、最初の試験導入が成功しやすくなります。私たちは試験導入の段階で成功条件を数字で先に決めることを必ずやります。動くものができたから成功ではなく、◯時間削減できたら成功、という基準です。