労務担当者の初動を、AIでサポートする社内ツールを作った話
労務の業務は、表に見えない判断の積み重ねでできています。社員から相談が入った時、それが就業規則のどこに該当して、誰に連絡して、いつまでに何をすべきか。これを正しく初動できるかどうかで、その後の展開が大きく変わります。「初動の品質を、担当者の経験に依存させない」を目標に、AIサポートの社内ツール(First Move)を作りました。
なぜ作る必要があったか
労務の現場で起きていたのは、「ベテラン担当者の引退や異動で、対応の質が大きく下がる」「初動でやるべきことを忘れていて、後から追加対応が必要になる」「過去の類似ケースの記録が散在していて、参照できない」といった問題でした。
どれも個別には深刻ではなくても、合わさると「労務全体がブラックボックスになっている」状態に近づきます。新任の担当者が育つまでに時間がかかり、ベテランへの依存が強まる悪循環が見えていました。
事象を入力すると、ネクストアクションが返ってくる
First Moveは単純です。発生した事象を入力フォームに書く。AIが就業規則・過去ケース・社内ナレッジを参照して、次にやるべきことを提示する。担当者は提示された候補を見て、「やる/変える/別の対応を選ぶ」を判断する。
AIは判断しません。あくまで「初動でやるべき候補を漏れなく出す」のが役割で、選ぶのは人です。これは設計判断として明確に分けています。労務には人事面・法務面の重い判断が必ず含まれるため、AIに最終判断を任せる構成はそもそも組織として受け入れられません。
記録が自然に貯まる仕組みにした
もう一つ意識したのは、対応の記録が自然に貯まることです。担当者が「やった/やらなかった/その理由」を選ぶだけで、判断ログとして残ります。これが過去事例として、次のケースのレコメンドの材料になっていく。
結果として、運用すればするほど精度が上がる構造になりました。担当者は「記録のために入力する」のではなく、「対応するために入力する」だけで済んでいて、副産物として記録が残っています。
運用して分かったこと
効果が大きかったのは、新任担当者の立ち上がりが早くなったことです。以前は1ヶ月かかっていた事象の判断が、初日からそれなりにできるようになりました。ベテランがチェックすればよく、教育コストが大きく下がりました。
意外な副産物として、就業規則そのものの不備が見えてくることもありました。AIが提示するアクションが現場の常識と合わない時、「ルールが古い」「実態と合っていない」ことが多い。労務の改善サイクルが回り始めたのは、想定していなかった効果でした。
これから外に出したいと思っている理由
労務の問題は、多くの企業で似た構造をしています。属人化、引き継ぎ不可、過去事例の散逸。私たちが解いた構造の解決策が、他社にも有効である可能性が高い。
ベータテストでは、就業規則と発生事象のサンプルを共有いただける企業を募集しています。秘匿性が極めて高い領域なので、データの扱い方も含めて個別に設計させてください。サービスページに詳細を載せています。